世界一気持ち悪いクリスマスツリー

きっと今あすなろは、次第に薄れていく意識の中で「ぼくどこにいるの?海?」なんて思ってる。走馬灯のように浮かんでは消える故郷の山…なんなの…これ…

神戸のメリケンパークに富山から樹齢150年、高さ30Mのあすなろの大木を船で運びクリスマスツリーにするという企画を知った時から私は気持ちが悪かった。まず気になったのは"移植"と書いてあったので、企画終了後もそこに木を残すのかどうか‥。まさかそんな一時の楽しみのために、わざわざ抜いて持ってきて見世物にするのか?と心配になったのだ。

でも残念なことにその心配は当たっていた。その木は見世物になったあとは撤去されるとのこと。切って記念品を作って売ったり神社の鳥居にする計画もあるという。
巨大クリスマスツリーについてはアメリカで毎年そういうことをやっているらしいがここは日本だ。そんな野蛮なことしなくてもいいんじゃないの?と思ってしまった。宗教的にもクリスマスツリーで神社の鳥居ってめちゃくちゃな話だろ!!

企画のキャッチフレーズが綺麗ごとばかり並べられているのが腹が立つ。「輝け、いのちの樹」。抜いて遠くまで持って来られて晒されるのに何がいのちの樹じゃ。阪神大震災で亡くなった人の鎮魂を持ち出したり、ヒノキになりたくてなれなかった落ちこぼれの樹あすなろがみんなの想いで世界一に輝く…等々、いかがわしい臭いがプンプンする。醜悪としか言いようがない。気持ち悪い。

と‥、私的にはとても好きになれない企画だったのだが、百聞は一見にしかずということで、先日実際に見に行ってきた。まずは遠くから見てみよう。画像右下の方にツリーがあるのがわかるだろうか?高さ30Mと言っても大きな建物が多いこの辺りでの存在感はこんなものだ。

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もうちょい近寄って… xmas2.JPG

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しかし、なんでライトアップ方式にしたのだろう。なんでLEDでキラキラさせなかったんだろう。なにやら「樹を傷めないため」と聞いたが、もうすでに引っこ抜かれて瀕死の状態なわけだ。ツリーとしての綺麗さで言ったらその辺にたくさんある小さな街路樹のほうがLEDでキラキラして綺麗だった。

さらに近づくとますます哀れな感じがした。ガリバーみたいに縛り付けられていて、これは木を傷めることにならないのかな?

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レンガ柄の鉢は叩けばポンポン音がするベニヤ板みたいな安っぽいものだった。さすが使い捨て。500円払うと鉢の上まで階段で上がることができる。私は500円払いたくないので上らなかったが、情報によると上には「"鼓動の樹"手を触れてみてください。生命の樹が発する鼓動を感じることができます」と案内文が書いてあったそうだ。鼓動?きっと脈も途切れ途切れになっていると思うが…。

木は日々切り出され製材されたりパルプになったり人間に利用されている。だからこの一本のあすなろの木だけ特別に考えることはないのかもしれない。だがたぶんこの企画、とってつけたような気持ち悪いことばかり言い過ぎた。裏のテーマは人間のエゴ。これはエゴの集大成だ。

主催者はぜひ佐々木の爺さんの「木の命の尊さをたたえる歌」を聴いてほしい。木も生き物だし利用するにも敬意を持たなければならない。この企画にはそういうものが感じられなかった。軽薄なコピーライターが考えたコピーなんかでは人はごまかされないのだ。明日の無いあすなろに、夢なんか見ることはできない。